2013年9月17日火曜日

重巡洋艦足柄の本を生徒にあげたら、おばあちゃんが一所懸命に読んでいた。

当校の生徒に、ひいじいちゃんが重巡洋艦足柄(あしがら)の機関士だった人がいる。母方のおばあちゃんの父親である。

重巡洋艦足柄は、英国のメディアに「飢えた狼Hungry Wolf」と呼ばれた。居住性が酷(ひど)いということから、そのように揶揄(やゆ)されたのであるが、帝国海軍は褒(ほ)め言葉と勘違いした。

足柄は1937年にジョージ6世戴冠記念観艦式に招待されて英国に赴(おもむ)き、真珠湾攻撃にも参加している。

そのひいじいちゃんは1945年6月8日に戦死した。英国軍の魚雷で沈められた。当時の動力源は、石炭を使うボイラーだった。石炭をくべるのを止(や)めれば、蒸気に関わる動力や電力が停止してしまう。だから、機関士は最後まで脱出できない。最後まで残って、ボイラーを維持し続けなければならない。乗員の半分ちょっとくらいが助かっている中で戦死したのは、機関士だったからというのもあるだろう。

祖国防衛のために働いたひいじいちゃんのことを誇りに思うようにと、すでに読み終わっている重巡洋艦足柄の本をその生徒にあげた。

すると、生徒本人は読んではいなくて、おばあちゃんが仕事の合間に読んでいた。老婆が重巡洋艦の本をせっせと読んでいる姿を想像すると、ちょっと不思議な感じがする。

そのおばあちゃんは、足柄が撃沈されたインドネシアのバンカ海峡Bangka Straitに行って、花束を投げたいと言っている。

父娘、あるいは親子というのはそういうものなのだろう。とりわけ、幼少の頃に父親が戦死しているのだから。

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和歌山県, Japan
早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業、「優」が8割以上で、全体の3分の2以上がA+という驚異的な成績でした。大叔父は競争率180倍の陸軍飛行学校第1期生で、主席合格・主席卒業にして、陸軍大臣賞を受賞している。いわゆる銀時計組であり、「キ61(三式戦闘機飛燕)の神様」と呼ばれた男である。苗字と家紋は紀州の殿様から授かったものである。

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