2013年6月29日土曜日

日本人は野球とゴルフが好きな理由を考えたら、学歴社会も見えた。

 日本人は剣術では日本刀を、剣道では竹刀を振り回していた。農民は鍬(くわ)hoeを使っていた。このあたりに、鍵があるのではないかと考えている。

 棒状のもの、あるいはそれに準ずるものを使うスポーツは、相当に特殊である。

 野球baseballとゴルフgolf以外にも、クリケットcricket・フィールド=ホッケーfield hockey・アイス=ホッケーice hockeyなどがある。ほかにも、ゲート=ボールの原型であるクロッケーcroquetがある。

 アイス=ホッケーを除けば、いずれも、イングランド発祥(はっしょう)のものである(アイス=ホッケーの起源は諸説あり、不明)。

 これらのうちで、競技人口の多さから考えると、クリケット・ゴルフ・野球が、棒状のものを使うスポーツで上位にくるであろう。

 さて、野球やゴルフで必要とされる動作は、バットやクラブを振ることが基本である。しかし、これは、人間の筋肉のつき方や骨格の構造からすると、相当に不自然であるそうだ。したがって、年少の頃から一定レベル以上に訓練しないと、自然にバットやクラブやスティックは振れない。だから、素振りという行為を繰り返す。

 オリンピックで野球が正式競技になるにあたって、ソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)が野球に乗り出した。それなりに身体能力の高い若者を集めて、野球に取り組ませた。強化のために試合をしなければならないが、アメリカや日本のプロ野球団を招聘(しょうへい)することはできない。そこで、早稲田大学の野球同好会・サークルを招(まね)いて、試合を行なった。不確かな記憶だが、すべて20点以上の差で、ソ連チームは無得点というように圧倒的な早稲田大学の野球同好会・サークルの勝利ばかりだった。

 20歳(はたち)あたりを超えてから、野球に取り組んでも、なかなかものにはならない。人間の人体の構造からすると、筋肉の使い方が不自然だからである。これはゴルフでも同様である。

 なぜ、イングランドでこうしたスポーツが発達したのだろうか? 年少から取り組み、それなりの期間の訓練を必要とするスポーツである。

 まず、イングランド人も剣(つるぎ)を使っていた。ということは、つまり、剣を水平に振るという動作は、普通にあったと考えられる。

 日本でも、剣術や剣道などで、日本刀や竹刀を横に振(ふ)るという動作はあった。また、農民は鍬(くわ)を使っていた。樵(きこり)は斧(おの)を水平に振っていた。

 一方、ヨーロッパ大陸は地面が硬(かた)いので、主に犁(すき)plough/plowを使っていた。犁(すき)は牛や馬や騾馬(らば=馬と驢馬(ろば)の混血)に曳(ひ)かせるものである。フランス人がクリケット・ゴルフ・野球を好まない理由のひとつであるように思える。また、フランスは剣(つるぎ)を使うことをやめ、フェンシングに進んだ。突っつくだけのスポーツである。もちろん、フランスとイングランドは仲が悪いということもあるのだろうけれど。

 つぎに、イングランドが階級社会であることが挙(あ)げられる。

 労働者階級の出身者は、幼少の頃、身体(からだ)が小さい間は煙突掃除(えんとつそうじ)をする。体格が大きくなると、炭鉱(たんこう)で働いたり、配管工(はいかんこう)として働いたりする。訓練に時間のかかるスポーツを習得することはできない。また、クリケットのように正式なルールでは2週間もかかるスポーツもできない。働き詰(づ)めでそんな時間がないからだ。労働者階級ができないスポーツを楽しむことで、階級差を思い知らせるのである。

 労働者階級の人々にとっては、2時間以内で終わるア式蹴球(あしきしゅうきゅう=サッカー)が適している。クリケットのような時間のかかるスポーツを、もっと短時間でできるようにルールを改変しようとした動きがあった。そのうちのひとつが、野球である。

 それでも、野球のバットやゴルフのクラブを振るのは、相当に訓練の必要な動作である。野球とゴルフくらいしか知らなければ、実感できないことかもしれないが。野球で素振りを繰り返す理由のひとつは、そこにあるのだろう。ゴルフでも打ちっぱなしで何度も練習しなければならないのは、同じ理由であろう。似たような動作なので、野球経験者はゴルフを始めても、上達が速いそうである。

 日本では、開国してまもなく、あちこちの欧米諸国がやって来たにも拘(かか)わらず、舶来のスポーツでは、野球が最もよく普及したようである。意外なところでは、日本は、幕末の開国以来、ともに、ヨーロッパ諸国からは小馬鹿にされているという共通点から、アメリカ合衆国とは親密なところがあるということもあるのかもしれない。

 英国の水兵がサッカーを持ち込み、それが普及した例が他国にはある。南米にある公用語がスペイン語やポルトガル語の国に英語名のサッカー=チーム(ただし、現地語の読み方をしている場合がある)があれば、英国の水兵によってもたらされたものである。

 日本では早い時期からのサッカーの人気は出なかった。20年くらい前にJリーグの創設とともに育成プログラムが始まって、少しずつ人気が出てきたが、それでも、日本代表の試合は耳目(じもく)を集めるが、Jリーグそのものには人気はない。

 日本人は骨盤が後ろに傾斜しているので、脚を上げる動作に適していない。つまり、サッカーには骨格が適していないのである(その割には、なかなか強い)。

 以上のようなことを考えていたら、注目すべき事実を知った。

 日本に野球を伝えたは、1887年(明治4年)にお雇い外国人として来日したホーレス=ウィルソンHorace Wilsonである。まず、第一番中学で英語を教えつつ、野球を伝えた。第一番中学校は、その後、開成学校となり、東京開成学校となり、帝国大学となり、東京帝国大学となり、東京大学となった。

 明治時代あたりに最強だった野球チームは、第一高等中学校(のちの、第一高等学校で、現在の東京大学教養学部)であった。今では東京六大学野球で50連敗以上をしている東京大学野球部であるが、明治時代には最強チームであり、言ってみれば、超古豪なのだ。

 この点から、エリートが嗜(たしな)み、かつ、そこが最強チームであったということから、野球が普及したといえる理由の一端(いったん)があるのではなかろうか?

 ここから、同様のことに思い至(いた)った。

 たとえば、柔道は官立開成学校(後の東京大学)出身の嘉納治五郎(かのうじごろう)が普及に尽力(じんりょく)し、オリンピック競技にもなった。一方、中卒の植芝盛平(うえしばもりへい)の合気道は、より実戦的であるということから、軍隊や警察でも指導したが、柔道ほども普及していない。

 京都大学がアメリカン=フットボールで大学日本一になったときには、世間の耳目(じもく)がアメリカン=フットボールに集まった。それ以前には、日本大学がアメリカン=フットボールで大学日本一に何度もなったが、そういうことにはならなかった。

 ラクロスlacrosseなんてスポーツは日本で一般にはまったくといってよいほど知られていなかった。カナダの国技とはいえ、日本ではマイナー=スポーツであった。ところが、1986年に慶應義塾大学が日本で最初のラクロス=チームを結成すると、急速に知られるものとなり、続々とラクロス=チームが各大学で結成され、今では、高校にもラクロス=チームがあるようになった。

 以上のように、立派な大学が活躍すると、そのスポーツは急速に普及するようだ。

 まとめ
 日本人は元々、剣術や剣道などで棒状のものを振り回すのが好きだった。
 野球の場合、現在の東京大学が明治期に大活躍したので、普及した。

 まとまりのない文章になってしまったが、面倒くさいので、書き直す気力はない。

追記:フィールド=ホッケーの日本男子代表は、1932年開催のロサンゼルス=オリンピックで銀メダルに輝いている。日本人は棒を振り回すのが得意な民族らしい。

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和歌山県, Japan
早稲田大学第一文学部哲学科哲学専修卒業、「優」が8割以上で、全体の3分の2以上がA+という驚異的な成績でした。大叔父は競争率180倍の陸軍飛行学校第1期生で、主席合格・主席卒業にして、陸軍大臣賞を受賞している。いわゆる銀時計組であり、「キ61(三式戦闘機飛燕)の神様」と呼ばれた男である。苗字と家紋は紀州の殿様から授かったものである。

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