出題された文章は、『潮(うしお)』という月刊誌に掲載された論文から採ったものだった。筆者がだれだったかは忘れた。
高齢のホームレスは中卒ばかりだという事実を知ると、高校生であれ、中学生であれ、驚く。いや、大学生でも驚く。
ところが、これは驚くべき事実ではない。
もちろん、現在の高校進学率が98%程度であることを考慮に入れると、ホームレスの人々が中卒中心というのを知ると、驚いてしまうだろう。しかし、昭和20年代(1945-54)の高校進学率は20%程度のものだったことを考えると、その年代に高校進学を迎えた年齢層にとっては、中卒が「普通」であって、高校進学率は、今の大学進学率(男子の大学進学率は50%程度、女子は40%未満)よりも遥かに低く、したがって、高校を卒業した者はそれだけで、相当に高学歴であるといえる。
高齢のホームレスが中卒だけだとして、それは、知能や教養の欠如によるものとはかぎらないのではないか。当時は、そもそも、相当な富裕層でなければ、少々頭がよいくらいでは、経済的な壁によって高校に進学できなかった。
同時に、資産家の子弟であれば、多少、勉強が苦手であっても、勉強ができるとはいえないような私立高校に進学できたであろう。日本全体が貧乏だった時代には、よほどの金持ちでなければ私立学校には進学させられなかった。この点から、昭和20年代に高校に進学できたというだけで、頭がよかったか、資産家の子弟であったかのいずれかであるか、あるいは両方であるということになる。
高齢のホームレスが中卒ばかりというのは、ちょっとしかきっかけで道を踏み外した際に、もともと、財産を持たない社会階層出身者が中卒になっているから、そのまま、落ちてしまったということにすぎないのではないだろうか?
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